花模様番外編*「朝顔」

    「あーあ、珀、何したらそんな傷ができる訳。」
呆れ顔で俺の頬の傷を眺める佐助さん。
俺だって、こんな傷付けたくて付けた訳じゃないんだよ。

 花模様番外編「朝顔


*珀サイド*
「じゃ、今日はここまでね。お疲れさん。」
俺よりも幾つか早く生まれて幾つか早く忍になった佐助さんは俺の先輩に
あたる存在。任務が終わった後は里に戻って俺の訓練に付き合ってくれた。

確か今は武田の忍だっただろうか。
まだまだ下っ端らしく、雑用も少なくないらしい。
よく俺に愚痴をこぼしてくる。
俺もいつかはその身になるわけだし、大切な情報だと
割り切って聞いている。

今日も訓練を終え、いつもの愚痴を聞いていると、懐かしい姿が映った。

「あ、かすがさんっ!!」

今は越後の上杉に仕えているというかすがは佐助さん同様
小さい頃からの知り合いだ。昔は友達、という感覚だったが、今では
憧れの存在であった。

「珀、久しいな…って、何故猿飛佐助がおるのだ!!」
「えー…俺様、いちゃいけないわけ?」

2人が会えば口げんかはいつもの事で、見ている限りは仲の良い関係だと
思うけど、少しうるさい気もする。

「越後からわざわざどうしたんですか?何か急用でも…?」
「いや、久々に珀の顔が見たくなっただけだ。特に用件はない。」

かすがさんの帰還で久々に3人そろった俺達。夜が明けるまで思い出話に明け暮れた。





「元気でな、珀。」
「かすがさんもお元気で…。」
「かすがちゃーん、俺様に送る言葉は??」
「貴様にくれてやる言葉などないわ。」
「はぁー?!」

いつもの様な光景。また3人で暮らせる日々が戻ってくる気がした。
それでも、かすがさんの後姿を見るとふと現実に帰される。

「可愛げにかけるね、相変わらず。」
「佐助さんの可愛げの基準の問題ですよ、それ。」
「言ってくれるねぇ。」

その後は昇ってくる朝日を眺めた後、佐助さんは武田に戻っていった。

俺も床に戻ろうか、と後ろを振り向いた時だった。






何が起きたのか一瞬分からなかったが、すぐに理解した。
顔を何か鋭いもので殴られた。
「ッ…てぇっ!!」
痛い。痛い。痛い。痛い。
気を抜けば真下に落ちていくようだった。
なんとか意識だけは保っていられた。痛いけど。

「痛い目にあいたくなけりゃ、金目のもの出しな。」
どうやら殴った奴らは金目のもの目当てで俺を襲ったらしい。
なんとか反撃したいところだが、相手は3人。こっちは1人。
どのご時世にもこんな下衆な輩は存在するものだな、と
どこか今の自分の状況を客観的に見ていた。

「どうやら痛い目に合いたいわけだな。このクソガキッ!!」
「ッ…離せッ!!」
金目のものなんか持ってねェと叫んだところで相手は手を止めてくれなかった。止めるどころか煩せェとさらに頭や体を殴られた。

結局、俺が意識を手放すまで殴られ続けた。反撃したいのだが腕がまったく
上がらない。骨が折れたあたりだろう。

意識が途切れる瞬間、誰かに呼ばれた気がするが、まったく反応できないまま意識はゆるやかに堕ちていった。



「相変わらず、無茶ばっかりだよね。珀。」





「あーあ、珀、何したらそんな傷ができる訳。」
呆れ顔で俺の頬の傷を眺める佐助さん。
俺だって、こんな傷付けたくて付けた訳じゃないんだよ。
下衆な輩に金目のものを出せと脅されたあげく、体中を痛めつけられました、なんて心配性の佐助さんになんて口が裂けても言えなかった。

「木から落ちました。顔から落下して、木の枝で頬を切りました。」
忍にしてみればいますぐ解任されるような理由だった。


「じゃ…何、このボロボロの腕。」
「うああああっ!!いってぇぇぇぇぇっ!!」
骨折した左腕をちょい、と佐助さんはひねってみせた。

「理由は聞かないでやるけど、あんまり無茶はするなよ?俺も武田へ行きにくくなる。」
「以後、気を付けます…。」


とりあえず、気づかれずに済んで良かったと息をおろすと佐助さんが言った




「金目のものをよこせっていわれたら『ありませーん♪』って言って逃げるのが最適だよ。相手が3人がかりならなおさら、な?」

「……」
相変わらずなのは佐助さんの方ですよ、と喉から出てきそうな言葉を抑えて
一つ、ため息を付く。

「本当、貴方らしい。」

その言葉が本人に届いたか分からないが、佐助さんなら今の俺の考えもお見通しなんだろうなと彼の背中を見て思った。

そんな俺達のやり取りなどつゆ知らず、朝顔の花は今日も凛と咲いていた。









いつも閲覧ありがとうございます。
はてさて、うごメモで現在更新中の戦国BASARA夢小説~花模様~の
番外編でございます。なんとなく本編はきちんと物語をさくさく書きたくて
それでもこんなちょっとしたお話も書きたいね、なんて思った結果です^^
本編に行き詰った時にちろちろ更新予定です(笑)

おもな話は過去話が多いかな、なんて思いますが書きこぼした日常の風景なんかも書けたらいいなと思います。

さて、今回はサブメインの佐助X珀の過去話。結構この2人の絡みは気に入っておる←自己満足
かすが嬢との絡みも混ぜちゃえ☆的なノリだったので結果まとまりに欠ける
お話になっちゃいました…。
この時点で珀の両親は他界しているのですが、珀が里を離れるまではいつも通りに接していたようです。2次創作のくせにどんだけ内容を盛り込ませれば気が済むんだ私。

ではでは^^次回も不定期に更新予定です。
閲覧ありがとうございました。